労働者とのミスマッチの防止や人手不足の解消に向けて、求職者等に職場情報を適切に開示・提供することが有効です。この度、厚生労働省が「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」を策定し、これを公表しました。
入社前後の職場に対する印象のギャップを可能な限り解消することで、労働者の離職率低下やエンゲージメント向上の一助となることが期待できます。このためには、求職者等が就職前に収集する情報の充実を図ることが重要です。
求職者等が求める情報には、例えば、次のような情報があります。
『企業等・業務に関する情報』
・企業等の安定性・事業、業務内容・業務により取得できるスキル・入社後のキャリアパス
『職場環境に関する情報』
・在宅勤務とテレワークの可否 ・女性活躍の状況 ・男性育休取得率・育児休業や短時間勤務等に関する制度
・職場の雰囲気や社風 ・社員の定着率
『労働条件・勤務条件』
・賃金(昇給等の中長期的な見通し含む) ・所定外労働時間(残業時間)、所定労働時間
・有給休暇取得率 ・副業、兼業の可否 ・転勤の有無
『その他』
【転職者の場合】
・経験者採用等割合 ・経験者採用等の離職率 ・研修制度 ・オンボーディング制度
・フォロー体制 ・過去に同部署に入社した人の経歴
【非正規雇用労働者の場合】
・就職後のキャリア形成(昇給制度及び教育訓練の有無等)
・正社員転換制度の有無および正社員転換実績
※求職者等は、所属する予定の部署やプロジェクトチーム単位、採用区分単位等の情報といった「部署単位等の情報」へのニーズがあります。
提供に当たっての課題や対応策
(1)職場情報の提供時期・提供方法
ウェブサイト、求人票や募集広告での開示のほか、多様な提供方法がある
① 企業説明会、選考前の面談等における提供 ➁職業紹介事業者を経由して提供
③選考に係る面接の場での提供 ④ 所属予定部署職員等との意見交換、職場見学の実施
(2)提供する情報の量
過度に多い情報の提供は、①かえってわかりづらく、②必要以上に応募者を絞り込む可能性がある
⇒情報の性質等に合わせて、上記(1)の多様な提供方法を活用しながら提供することも有効
(3)資本市場における人的資本に関する情報の活用について
資本市場において開示が進められている人的資本に関する情報を労働市場向けに活用することも有効
(4)数値情報の提供
法令によるものではなく、任意に提供する数値情報は内容が不明確だと求職者等の誤解を招く可能性がある
⇒用いている数値の定義、算出方法を明示
(5)実績が低調な取組等に係る情報の提供
採用活動上、不利な影響をおよぼす可能性が懸念される情報も誠実に提供することが望ましい
⇒情報提供に当たり、取組状況、経年変化、KPI、今後の方針等を併せて提供
(6)情報の正確性
求職者等へ提供する情報は、入社後のミスマッチが可能な限り生じないよう、より実態に近い正確な内容を反映したものである必要があり、定義等があいまいな情報、長期間にわたり更新されていない情報等は見直す必要がある
⇒過度の負荷にならない範囲で情報を更新するとともに更新した時期等を併せて提供。導入している制度等はその有無だけでなく、利用状況等も併せて提供
(7)求職者等への情報提供に係る支援
ウェブサイトの更新やウェブサイト構築に係る負担が大きい場合やその他より幅広い情報提供を希望する場合
⇒しょくばらぼの活用
(8)中小企業等における情報発信
人材確保に向けた職場環境の整備等に取り組んでいる情報等、積極的な発信が効果的
⇒しょくばらぼの活用
「しょくばらぼ」は、「若者雇用促進総合サイト」、「女性の活躍推進企業データベース」、「両立支援のひろば」に掲載されている企業等の情報を求職者等に総合的・横断的に提供するウェブサイトです。幅広い情報提供が可能となるほか、ハローワークインターネットサービスと連携しているため、より少ない作業負担で求職者等に対する情報提供ができます。※現在、上記の3サイトに掲載されている企業の情報を転載していますが、令和6年度中に幅広い企業等の情報を掲載できるよう改修を行う予定です。本改修前にしょくばらぼへの掲載をご希望の場合は、上記3サイトのいずれかに掲載いただくことが必要です。
厚生労働省「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」等より引用
◆厚生労働省:求職者等への職場情報提供に当たっての手引
https://www.mhlw.go.jp/content/001237234.pdf
■職場情報総合サイト(しょくばらぼ) https://shokuba.mhlw.go.jp/